弊社が介護事業で創業してから8年が経ち、今ではある程度経営を軌道に乗せることができています。(もちろん完璧とは全く思っていません)
そして、ありがたいことに経営者の方々に対し、経営に関する相談や助言をさせて頂く機会も増えてきました。
現在介護事業を検討している方の中には「介護業界は今後伸びる」「今は介護事業がアツい」そんな話を聞いた方も多くいらっしゃると思います。実際に、この業界で事業を行っている身としても、確かにオススメできる業界です。
とはいえ、無策で起業したり、リスクを把握せず事業を始めることは避けるべきです。実際に「事業を始めたはいいけど、思わぬところでつまずいてしまった」という方も多く見てきています。
そこで今回は、これから介護事業の開業を検討している方向けに、『介護経営の思わぬ落とし穴』というテーマで筆を取ってみました。
この記事を最後まで読めば、誰もが遭遇する大きな壁への対策を事前に知ることができ、無事に事業を軌道に乗せる確率が上がります。
まず、介護事業が失敗してしまう、大きな原因を見ていきましょう。
①資金不足
②知識不足
③人材不足
④利用者不足
⑤競争の激化
意外と多いですよね。 一つ一つ見ていきましょう。
◆資金不足
介護事業の開業には、法人としての手続きや規定人員の確保などにも色々とお金がかかり、資金の準備ができていないことが失敗の大きな原因となります。
介護事業の開業申請は、「法人であること」と「人員基準を満たしていること」が必須条件になるので、開業前から職員の雇用が必要になりますね。
申請が受理され開業できても、収入がない段階から職員の給与の支払いが発生するので、開業前の事業計画書で想定ができていないと資金が足りなくなりますよ。
また、介護保険サービス報酬が支払われるまでには2カ月ほどかかります。そして、たとえ報酬が入っても最初から多くの利用者は見込めないので、軌道に乗るまでは収支がマイナスになることを想定しておくことも大事です。
介護事業開業に失敗しないように、当面の運転資金の準備は非常に重要です。
◆知識不足
介護事業は事業者の意思とは関係のないところで報酬が決められるだけでなく、事業を運営するにあたり多くの制約や壁があります。
介護施設を設立するには、老人福祉法等の法令によって定められた、建築基準や人員配置基準、運営基準を満たす必要があるため、初期費用が高くなる可能性が大きいのです。こういった業界に関する情報を把握せずに起業してしまうと思わぬ痛手を負うことも……。
他にも、介護職に携わるには、介護に関する高度な知識・スキル、施設運営にあたってのマネジメント能力も必要です。
介護施設では、常に被介護者様が不快な思いをしないように常に気を付けなければありません。被介護者様が施設に不満を持てば、他の施設へと移ってしまうかもしれません。
介護に関する知識が不十分であるまま介護事業を始めてしまうと、倒産してしまうおそれがあります。十分に注意しましょう。
但し、分からないことが多いからと言って、知っているふりをしたり隠れたりしないようにしましょう。あくまで介護事業は多くの人々に求められている事業だということを忘れずに、行政やケアマネ、関係機関、そして時には家族さんに対しても恥ずかしがらずにどんどん質問して知識を吸収しましょう。
◆人材不足
介護業界において、人手不足は長年の悩みといっても過言ではありません。今後、日本は懸念されていた「2025年問題」に突入しようとしています。
※「2025年問題」とは、2025年には65歳以上の高齢者の人口が、全人口の30.3%を占めると予測されていることです。これにより、現役世代の労働人口が減少し、社会全体で深刻な労働人口不足になると予想されています。
つまり介護サービスを必要とする人たちが増えるのに対して、介護サービス不足、介護人材不足が深刻化し、居場所のない高齢者が増える可能性がおおいにあるわけです。
このような現代社会の背景において、よりいっそう「住み慣れた地域で、元気に過ごしていただくための環境づくり」が肝心になってくると思います。しかし介護職は「低収入」「重労働」などのマイナスイメージから、介護職の魅力・他社との差別化を図ることが必要となってきます。働きやすい職場環境の検討も事業主にとって、無視できないものになりますね。
まずは、厚生労働省が提示する訪問介護事業所における人員配置基準要件をしっかり理解したうえで、職員体制の充実度を図っていく工夫が必要です。
特に、ICTの活用は今後のカギになると言っていいでしょう。
※ICTとは、「Infomation and Communication Technology」の略語で、日本語で情報通信技術のことです。ITを導入してうまく活用していきましょうということですね。
介護事業でICTを導入すると、利用者情報を管理・共有でき、結果的に利用者や職員にも多大な効果を与えられるでしょう。
特に勤務場所がその都度変わる訪問介護のケースでは、業務報告作業などが簡単に済ませられるので、負担が軽減できるのがメリットです。
訪問介護では多くの場合、ヘルパーが自身の自宅から利用者宅へと直行直帰することが主流となっています。その場合、訪問する利用者情報・サービス内容の記録・申し送り、シフト管理・勤怠管理、などの情報共有が、「訪問介護記録ソフト」や「訪問介護記録システム」などの活用により、時間短縮や情報共有する際の円滑化に有効的です。
人材不足に対応する方法としては、シンプルに給料を上げるのが最も効果的です。つまり、業務効率化と負担軽減と真剣に向き合いPDCAを回し続けることで人材不足の改善にも繋がるのです。介護事業経営者の最も大きな仕事と言えるかもしれませんね。
◆利用者不足
介護サービスをご利用される方と訪問介護事業をつなげてくれるのはケアマネジャーです。そのため営業活動を行うのは主にケアマネジャーになります。
開業直後はハッキリ言って認知度はありません。想像以上に誰にも知られていない前提で考えると介護報酬は少額であることが予想されます。そのため、利用者獲得に向けた営業活動、情報発信活動や内覧会など積極的に行いましょう。
そして、利用者獲得後も、他社との差別化を図るため、利用者の声を尊重し、安心できるサービス提供を行うことが長期的な利用者獲得に繋がっていきます。介護報酬は、サービス提供開始してから入金されるまで2ヶ月の期間を要します。そのズレもしっかり把握して、運営を行いましょう。
また、利用者不足に関する注意点は、どの介護事業者も利用者さんを確保しておきたいという点です。当たり前ですが、性格の優しい利用者さんやサービスをたくさん使って下さる方は自社でサービスを提供したいと考えるのが必然です。その為、せっかくケアマネと寒け形成を築けたとしても法人の方針上、利用者さんの紹介にまでは繋がらないことが多々あります。
そのため、最初は難しくて大変(しかも給付額も低い)な方の対応をして、しっかりと実績を積み上げていくことが必要になります。
◆競争の激化
近年、参入しやすいといわれる介護事業ですが、競合が増加していることを無視してはいけません。事業者同士の競争の激化も開業失敗の大きな原因になりえます。デイサービスではカジノ型や動物共生型など、かなりエンタメに寄った施設も増えてきており、どの事業者も必死です。
参入事業者が増加している理由として、介護事業は在庫を抱えるリスクもなく、報酬の9割が介護保険から支払われるので、他の事業を開業するよりも比較的安定した収入が得られるという企業サイドの魅力があります。
安定収入が得られるということで事業の柱の1つとして始めたい事業者も年々増えていることは予想できるでしょう。他の事業をしている企業の参入や介護の資格を持っている人の独立開業のハードルが低く、競争相手が増えてしまうのが競争激化の要因ですね。
あらゆるマーケットを意識して、競合が少ない場所をリサーチしていくことも非常に重要となってくるでしょう。
◆おわりに
いかがだったでしょうか?
介護事業は今の参入が本当にアツいのですが、当然のことながら失敗のリスクもあります。
しかし、きちんとリスクを把握して、適切な対策が取れれば、これほど楽しく、人に喜んでもらえる事業は無いと自負しています。
皆様も是非、介護業界へ一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。
今回の記事を読んで頂き、不安を感じたり、ここがもっと知りたいという方がいらっしゃれば弊社で無料相談も行っているのでぜひご連絡ください。
問い合わせページよりいつでもご連絡お待ちしております。
Comentários